あれは、梅雨時のジメジメした季節のことでした。いつものように洗濯物を干そうと洗濯機の蓋を開けた瞬間、「うっ…」と思わず顔をしかめるような、生乾きとも違う、もっと根本的などんよりとしたドブのような臭いが鼻をついたのです。最初は気のせいか、あるいは洗濯物自体の臭いかとも思いましたが、日を追うごとに臭いは強くなり、洗濯後の衣類にまでその嫌な臭いが移るようになってしまいました。これはいけない、と一念発起。まずは市販の洗濯槽クリーナーを使ってみることにしました。説明書通りにクリーナーを入れて槽洗浄コースで運転。終わった直後は少し臭いが和らいだ気がしましたが、数日もすると元通り。次は酸素系の漂白剤が良いと聞き、お湯と一緒に投入してつけ置き洗浄。ワカメのような黒いピロピロした汚れがたくさん浮いてきて、「これだ!」と期待したのですが、やはり効果は一時的。根本的な解決には至りませんでした。途方に暮れかけた私は、インターネットでさらに情報を検索。すると、臭いの原因は洗濯槽だけでなく、排水口にある可能性もあるという記事を発見しました。恐る恐る洗濯機パンの排水口カバーを外し、中の排水トラップを覗き込んでみると…言葉を失うほどのヘドロ汚れが溜まっていたのです。髪の毛や糸くず、洗剤カスなどが混ざり合い、まさにドブそのもの。ゴム手袋とマスクで完全防備し、ブラシとパイプクリーナーで必死に掃除しました。排水ホースの中も、届く範囲でブラシを入れてゴシゴシ。するとどうでしょう、あれほど悩まされていたドブ臭さが嘘のように消え去ったのです。洗濯槽の掃除はもちろん大切ですが、排水口周りの汚れも見逃してはいけないのだと痛感した出来事でした。それ以来、洗濯槽クリーナーでの洗浄に加え、排水口の掃除も定期的に行うようにしています。あの悪臭との長い戦いは、排水口掃除という灯台下暗しな結末で幕を閉じたのでした。
投稿日